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第146号 神の手

もう30年も前のことだが、通っていた床屋さんに、80代後半と思われる、お婆ちゃんが居た。
腰は流石に少し曲がってはいたが、話が楽しくいつも髭を剃って貰ったり
襟足を綺麗にして貰っていた。
息子夫婦の代になっていて、お婆ちゃんは剃刀だけを担当して居たんだと思う。
今ふっと思い出し、あの刃触りが懐かしく、其の後色んな人の剃刀を経験したが
あの不思議な感触に出会うことは皆無である。
”和剃刀”と言っていた、包丁の使い古した砥いで刃がかろうじて残っているような
小刀と言った風情の棒状の剃刀を手にしていた。
なんとも優しく、チクリともしないばかりか、スーッと顔の表面を滑って行く。
気持ちの良さは、天下一品であった。
これぞ神の手と言って間違いない。
振り返って自分はまだまだ、あのお婆ちゃんの様な手の動きにはなっていない、又
患者さんはそこまで、気持ちよく受診されていない。
もっと腕を上げようきっと必ず近づこう。

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